集合トランプ

次世代のトランプ「集合トランプ」で遊べるゲームを紹介しています

大集豪

概要

定番トランプゲームのひとつに、「大富豪」(あるいは「大貧民」)がありますね。これを集合トランプ上に持ち込んだものとして、大集豪 *1 というゲームが知られています。

定義

ルール説明の前に、このゲームにおける「カードの強さ」などを定めておきます。

カードの強さ

2 枚のカード(2 つの集合) A, B について、 A B より 強い とは、次の 2 つの条件のうちどちらかを満たしていることを言います:

  •  A \supsetneq B
     A B を真に含んでいる)
  •  |A| = |B| かつ  A >辞書  B
     A, B の要素数が等しく、かつ辞書式比較において  A B より大きい)

ただし、例外的に  \emptyset U より強いと約束します。*2

また、 A B より 弱い とは、 B A より強いことと定めておきます。

具体例を挙げると、以下のような強さ関係が成り立ちます:

  •  \{1, 2\} \{1\} より強い(含んでいる)
  •  \{2, 3, 4\} \{1, 4, 5\} より強い(要素数が等しく、辞書順で大きい)
  •  \{1, 3, 5\} \{2, 5\} より強くはないし、弱くもない

例の 3 番目からもわかるように、「強くない」と「弱い」はイコールではありません。

カードの連続

 n 枚のカードの組  (A_1, A_2, \cdots, A_n)連続している とは、これらの要素数がすべて等しく、かつこれらが辞書順で連続して並んでいることを言います。例えば:

  •  (\{3\}, \{4\}, \{5\})
  •  (\{1, 3\}, \{1, 4\}, \{1, 5\}, \{2, 3\})
  •  (\{1, 4, 5\}, \{2, 3, 4\}, \{2, 3, 5\}, \{2, 4, 5\}, \{3, 4, 5\})
  •  (\{1\})(カードが 1 枚だけの場合、無条件に連続していることになります)

これらの集合たちは、それぞれ「連続している」ということです。逆に、次の集合たちは連続したものではありません:

  •  \{4\}, \{5\}, \{1, 2\}(要素数が異なっている)
  •  \{1, 3, 5\}, \{2, 3, 4\}, \{2, 3, 5\} \{1, 4, 5\} が抜けているので、辞書順連続でない)
  •  \{1, 2, 3, 4\}, \{1, 2, 3, 5\}, \{1, 3, 4, 5\} \{1, 2, 4, 5\} が抜けているので、辞書順連続でない)

「辞書順連続」の条件は少し見えにくいので、気をつけてください。

ルール

プレイヤーを 2 人以上 *3 集めて、全員にできるだけ均等に 64 枚のカード全てを配り切ります。その後、適当な方法で手番順とスタートプレイヤーを決定します。

手番にできること

手番のプレイヤーは、手札からカードを選んで場に出していきます。

場にカードがない場合

場にカードが出ていない(すなわち、ゲーム開始直後 または 場が流れた直後)ときは、プレイヤーは 連続した 1 枚以上のカードの組を自由に選んで場に出さなければいけません。*4

場にカードがある場合

場に既に  n 枚のカードの組  (A_1, A_2, \cdots, A_n) が出ているとします。このとき、プレイヤーは、(連続していなくてもよい) n 枚のカードの組  (B_1, B_2, \cdots, B_n) であって、以下の強さ関係が成り立つようなものを、手札から自由に選んで出すことができます:

\[ \xymatrix{ A_1 \ar[r] \ar[d] & A_2 \ar[r] \ar[d] & \cdots \ar[r] \ar@{}[d]|\cdots & A_n \ar[d] \\ B_1 \ar[r] & B_2 \ar[r] & \cdots \ar[r] & B_n } \]
場にカードがある場合の、手札を出せる条件

 A より  B が強いことを、 A \to B で表しています。

なお、出せるカードがない(あるいは、出したいカードがない)場合は、パスをすることができます。誰もカードを出すことなくパスが 1 周続いたら、場が流れ、最後にカードを出していたプレイヤーが次の手番を行います。

これを繰り返して、早く手札を 0 枚にした順に、ゲームの順位が決定します。

革命

連続した 4 枚以上のカードの組が出されると、革命が発生します。

革命が発生すると、「強さ」「弱さ」の関係がひっくり返ります。すなわち、さきほど図示していた条件における "矢印の向き" が逆転します:

\[ \xymatrix{ A_1 & A_2 \ar[l] & \cdots \ar[l] & A_n \ar[l] \\ B_1 \ar[u] & B_2 \ar[l] \ar[u] & \cdots \ar[l] \ar@{}[u]|\cdots & B_n \ar[l] \ar[u] } \]
強さ関係逆転時における、手札を出せる条件

革命によってひっくり返った強さ関係は、場が流れた後も継続します。

 \emptyset 切り /  U 切り

それ自身を除いたあらゆる集合より弱い集合」が それ単体で(1 枚組として)場に出されると、その瞬間に場が流れ、そのカードを出したプレイヤーが次の手番を行います。*5

難しく書いていますが、要は「通常の強さ関係時には  \emptyset で、逆転時には  U で場が切れる」というルールです。

カードを出せる条件の記述が抽象的だったので、いくつか具体例を挙げます。

まず、初めに出たカードが 1 枚であれば、単純により強いカードを出していくだけになります:

\[ \xymatrix{ \{3\} \ar[d] \\ \{1, 3\} \ar[d] \\ \{1, 5\} \ar[d] \\ \{4, 5\} \ar[d] \\ \{2, 4, 5\} \ar[d] \\ \{1, 2, 4, 5\} } \]
カード 1 枚のときの流れ(各段がそれぞれ 1 手番を表します)

次に、初めに複数枚の連続したカードが出た場合の流れは、以下のようになります:

\[ \xymatrix{ \{1, 5\} \ar[r] \ar[d] & \{2, 3\} \ar[r] \ar[d] & \{2, 4\} \ar[d] \\ \{2, 5\} \ar[r] \ar[d] & \{2, 3, 5\} \ar[r] \ar[d] & \{2, 3, 4, 5\} \ar[d] \\ \{3, 4\} \ar[r] & \{3, 4, 5\} \ar[r] & U } \]
カード 3 枚組のときの流れ

すべての矢印が成立していることを確かめてみてください。

例外的に  \emptyset U より強いことを用いると、次のような奇妙な出し方をすることもできます:

\[ \xymatrix{ \{1\} \ar[r] \ar[d] & \{2\} \ar[d] \\ \{4\} \ar[r] \ar[d] & \{2, 4\} \ar[d] \\ \{1, 4\} \ar[r] \ar[d] & \{2, 5\} \ar[d] \\ \{1, 3, 4\} \ar[r] \ar[d] & U \ar[d] \\ U \ar[r] \ar[d] & \emptyset \ar[d] \\ \emptyset \ar[r] & \{4\} } \]
カード 2 枚組のときの流れ

はじめに 4 枚以上の連続カードの組が出されると、革命が起こって強さ関係が逆転するため、例えば以下のようにカードが出されていきます:

\[ \xymatrix{ \{1, 4, 5\} \ar[r] & \{2, 3, 4\} \ar[r] & \{2, 3, 5\} \ar[r] & \{2, 4, 5\} \\ \{4\} \ar[r] \ar[u] & \{2, 4\} \ar[r] \ar[u] & \{3, 5\} \ar[r] \ar[u] & \{4, 5\} \ar[u] \\ \{1\} \ar[r] \ar[u] \ar[d] & \{2\} \ar[r] \ar[u] \ar[d] & \{3\} \ar[r] \ar[u] \ar[d] & \{4\} \ar[u] \ar[d] \\ \{1, 2\} \ar[r] \ar[d] & \{2, 4\} \ar[r] \ar[d] & \{2, 3, 4\} \ar[r] \ar[d] & \{3, 4, 5\} \ar[d] \\ \{1, 4\} \ar[r] & \{1, 2, 4\} \ar[r] & \{1, 2, 3, 4\} \ar[r] & U } \]
カード 4 枚組のときの流れ

1 段目と 3 段目で革命が起こっています。

まとめ

大富豪 on 集合トランプ、大集豪 でした。ルールはほとんど大富豪そのままですが、強さ関係が変更されていることで、違ったテイストのゲームになっています。複数枚出しがきれいに決まると気持ちいい。

また、大富豪と言えば「ローカルルールの多さ」ではないでしょうか。この記事では特殊ルールを「革命」「*切り」しか定義していませんが、この他にもいろいろな追加ルールを考えてみるのも一興です。

*1:元のゲーム名「大富豪」、"みんな集まる" の意味での「大集合」、ある数学的な構造を考えるときに "基礎とする" 集合「台集合」の 3 つのワードが混ざっています

*2:同時に、 U \emptyset より強くもあることに注意してください

*3:通常の大富豪よろしく、できれば 3 ~ 4 人は確保したほうが楽しいと思います

*4:前述のとおり、カード 1 枚からなる組は必ず連続しているので、手詰まりが発生することはありません

*5:"8 切り" というよりかは "スぺ 3" のほうがルールとしては近そうですね